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感染症グループ

感染症グループとは

感染症グループは以下の4つの分野に力を入れ診療を行っています。

  1. 難治性感染症や易感染宿主における感染症の治療
  2. 他診療科への感染症診療支援
  3. 院内感染の制御
  4. 感染症専門医の育成

(1)難治性感染症や易感染宿主における感染症の治療

感染症内科の診療形態は病院によって様々ですが、当グループでは主治医として感染症の治療を行うことを大切にしています。

医療の高度化に伴い、造血幹細胞移植や臓器移植、悪性腫瘍に対する強力な化学療法、ステロイドや生物学的製剤の使用など、いわゆる易感染宿主が増加しています。当教室には、血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患などの基礎疾患を有する易感染宿主が多く存在するために、尿路感染や市中肺炎などの一般的な感染症に加えて、易感染宿主の感染症を多く経験します(図1,2)。易感染宿主では、免疫正常者と比べて原因微生物が多彩であり、重症化することもしばしばですが、主治医として治療を行うことで、治療の難しさを経験するとともに、感染症をコントロールしながら原疾患に対してどのように治療を行っていくかなど他グループとのディスカッションを通してより理解を深めています。

また、近年は国内外を問わず人や物の移動が増え、輸入感染症に接する機会も増えています。重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、エボラ出血熱やジカ熱の流行も記憶に新しいところです。海外渡航者が発症するのみでなく、2014年に起きたデング熱の国内流行のように、渡航者から持ち込まれた感染症が国内で流行する場合もあり、注意が必要です。福岡は海外からの訪問者や帰国者が多いこともあり、これら輸入感染症に接する機会も多く、積極的に診療に取り組んでいます。中でも重症マラリアは多施設共同研究にも参加しており、キニーネ静注薬を用いた治療を行っています。図3に当院で経験した重症マラリアの血液標本を示します。

(2)他診療科への診療支援

主治医としての感染症診療と同じく、当グループで大切にしているのが、他診療科への診療支援(コンサルテーション)です。内科系・外科系問わず多くの診療科からコンサルテーションを受けるため、手術後・臓器移植後の感染症や人工物(人工血管や人工関節など)関連感染症など、幅広い感染症を経験できます。また、血液培養が陽性となった症例についても全例治療介入を行っており、年間 600-650 件程度の治療介入を行っています(図4)。これらの診療支援を通して、適切な抗菌薬治療を行い、他診療科での治療がより円滑に進むことを目指しています。

(3)感染制御

感染症の治療と並んで、感染症の予防と院内感染制御も非常に重要です。当グループでは、グローバル感染症センターの一員として感染制御にも取り組んでいます。

薬剤耐性菌は、より多種多様に、耐性機構もより複雑化しています。我々は、当院の薬剤耐性菌の検出状況や院内伝播を起こし得るウイルス感染症の発生状況を常に把握し、動向をみています。また、適切な環境整備がなされているか、感染対策に関する基本的な知識・手技の習得ができているか、毎週院内のラウンドを行っています。

薬剤耐性菌への取り組みとして、環境整備とともに抗菌薬の適正使用が求められています。2016年には、厚生労働省から「薬剤耐性菌に対するアクションプラン」が出され、キノロン系抗菌薬の使用量や、MRSAの分離率について具体的な改善目標が立てられ、不要な抗菌薬使用を大幅に減らすよう推奨されています。当院でも抗菌薬適正使用支援チーム(AST)を結成し、我々もその一員として適切な抗菌薬使用のための活動に従事しています。

(4)感染症専門医の育成

平成30年度より新内科専門医制度が始まり、各分野でも専門医カリキュラムの見直しが行われています。当院は日本感染症学会認定研修施設であり、症例数も豊富にあるため、専門医カリキュラムに沿った研修を行うことができます。また、感染症専門医には原因となる微生物への知識も必要ですが、当グループでは院内の細菌検査室と密な連携をはかっており、毎月の合同カンファレンスや日々の検査を通して、細菌に関する専門的な知識を身につけることも可能です。

さらに、各施設で感染症診療だけでなく、院内の感染制御に関する専門的な知識を持った医師も必要とされています。Infection Control Doctor(ICD)の資格を取得し、実際の感染制御に関わることで知識を深め、感染症診療・感染制御、両者の経験を持った専門医育成を目標にしています。