第一内科について

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現教授挨拶

2026年4月1日付で、赤司浩一先生の後任として、九州大学病態修復内科学分野(第一内科)の第十一代教授を拝命しました菊繁吉謙と申します。着任に際しまして、ご挨拶申し上げます。

九州大学第一内科は、開講以来120年以上の歴史を有する、わが国でも屈指の伝統を誇る総合内科学教室です。これまで幅広い専門領域において多くの優れた人材を輩出し、我が国の医学・医療の発展に大きく貢献してまいりました。なかでも、初代・第二代教授である稲田龍吉、井戸泰両先生によるワイル病病原体発見の業績は、ノーベル賞候補にも挙げられ、本教室の学問的伝統を象徴するものとなっています。

このような歴史と伝統を礎として、第一内科は、臨床から基礎研究へ、さらに基礎研究の成果を臨床へ還元するという医学の本質を重んじ、世界水準の研究力と臨床力を備えた内科医、さらには physician-scientist の育成に一貫して力を注いでまいりました。

第一内科には、開講以来、脈々と受け継がれてきた理念があります。初代・稲田教授のお言葉を借りれば、それは「自由(Freiheit)」の精神です。私自身、第一内科に入局して最初に先輩方から教えていただいたのも、この言葉でした。

第一内科が大切にしてきた「自由」の一つは、思考の自由です。すなわち、前例や既成概念にとらわれることなく、自由に発想し、自由に議論することを尊ぶ姿勢です。臨床においても研究においても、目の前の現象や病態が既存の知見のみで十分に説明できるとは限りません。そうした時にこそ、常識や前例に縛られない柔軟な発想と、立場や年齢に左右されない闊達な議論が求められます。第一内科は、開講以来、この学問の自由を何よりも大切にしてきた教室です。この姿勢は、AIをはじめとする技術革新が進む現代においても、変わることなく重要です。目の前の事象に疑問を抱き、好奇心をもって考え、自ら課題を見いだし、その解決に向けて挑み続けることは、人間に本質的に備わった重要な力であり、そこにこそ個々の専門性と独創性が最も強く表れると考えています。

もう一つの「自由」は、個人としての自由です。すなわち、一人ひとりが自らの好奇心と志に基づき、真に意義あると信じるものに誠実に取り組むことを尊重する精神です。この自由闊達な気風のもと、第一内科はこれまで、臨床医学、基礎医学、さらには広く社会の各分野において、多くの優れた人材を輩出してまいりました。これは、本教室が単なる臨床教室にとどまらず、高い志をもつ個人が集い、互いに切磋琢磨しながら成長する場であり続けてきたことの証であると考えています。私は、この伝統を大切に受け継ぎながら、臨床力、研究力に加え、豊かな人間性を備えた医師を育てる教室として、第一内科をさらに発展させてまいりたいと考えています。

現在、第一内科が担う診療領域は、血液、腫瘍、心血管、免疫・膠原病、感染症と多岐にわたり、いずれも全身の諸臓器に関わる病態を対象としています。そのため、個々の臓器や疾患を深く理解するだけでなく、それらを臓器横断的・全人的に捉える視点が不可欠です。第一内科は、総合内科学教室として、複数の診療・研究分野が連携し、患者さん一人ひとりの全身を診ることを大切にしてまいりました。その姿勢を表す言葉として、本教室には「患者の人、全身を診て、臓器ごとの理解を有機的につなぐ」という言葉があります。病を臓器単位でのみ捉えるのではなく、病を抱える一人の人間として患者さんを理解し、全身を視野に入れながら各専門領域の知を結びつけて診療にあたること。これこそが、総合内科学教室としての第一内科の使命であると考えています。

また、第一内科が専門とする領域には、全身性疾患や難治性疾患が多く含まれる一方で、近年は分子標的治療、CAR-T療法をはじめとする細胞療法など、新たな治療法の進歩により、診療は大きな変革の時代を迎えています。こうした医学の進歩の恩恵を患者さんに最大限還元するためには、私たち自身が常に学び続け、研鑽を重ねていかなければなりません。九州大学第一内科は、医師として真摯に患者さんに向き合い、生涯にわたり学び続ける者にとって、常に開かれた場でありたいと考えています。

120年を超える歴史のなかで、第一内科は、時代の変化を受け止めながらも、「自由」の精神を礎として、臨床、研究、教育に真摯に取り組んでまいりました。今日、医療環境も研究環境も大きく変化し続けていますが、伝統とは、変化に応じて磨き上げることによってこそ、真に受け継がれるものでもあります。私たちもまた変化を恐れず、柔軟に適応しながら、この伝統ある第一内科をさらに発展させ、本教室から日本のみならず世界で活躍する人材を育み、送り出していきたいと考えております。

その実現のためには、諸先輩方、後輩の皆さん、そしてすべての同門の先生方のお力添えが不可欠です。第一内科がその本分を忘れることなく、今後ますます発展していくことができますよう、皆様の変わらぬご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

令和8年5月 九州大学大学院 医学研究院 
病態修復内科学(第一内科) 教授 菊繁 吉謙