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国内留学便り(慶應義塾大学)

平成20年卒 土橋 賢司

私は、2012年4月より、慶應義塾大学医学部・先端医科学研究所の遺伝子制御研究部門(佐谷秀行教授)に国内留学しています。私の専門は腫瘍内科であり、初期臨床研修を終えた後、九州大学病院で働きました。癌の基礎研究を行うにあたり、国内留学することになりました。

本教室は、東京都新宿区信濃町の慶應大学病院と同じ敷地内に併設している総合医科学研究棟内にあり、がん研究を行う基礎教室です。慶應医学部内で、がん研究専門の基礎教室は当教室のみであり、慶應の様々な臨床教室の大学院生も所属しています。また私のように他大学より国内留学や研究しに来ている人も多くいます。総員40名ほどの大きな研究室で、8つのグループより構成されています。研究室全体で扱うがん腫は、血液、乳癌、肺癌、卵巣癌、口腔扁平上皮癌、脳腫瘍、消化器癌などと多く、テーマも、がん幹細胞、発がん、細胞周期、酸化ストレス、細胞骨格、代謝など多岐に渡ります。

研究室全体は大きいもののグループ化されていることで、普段は比較的コンパクトな人数で動いています。私は永野修先生をリーダーとするCD44グループに所属し、主にがん細胞の酸化ストレス回避機構に関して研究しています。酸化ストレス回避機構は正常細胞に元々備わっているもので、がんではこの機構を利用、発達させることで、浸潤、転移などの悪性化を起こしたり、放射線療法や抗がん剤への治療抵抗性を獲得したりすることが考えられています。研究室全体でのミーティングは、月に数回木曜日に行われるTJC(Thursday Journal Club)と呼ばれるものがあります。ここでは、一人のプレゼンテーターが論文を選び、約2時間その内容について発表します。論文の背景から一つ一つのデータまで詳細にプレゼンし、適宜、聴衆が質問するスタイルです。綿密な準備が求められ、用意に長い時間をかけます。その分、一つの論文とじっくり向き合うことで、奥深い解釈や実験系の工夫などに気づくこともあり、大変勉強になります。ここでの発表形式は、自身の研究計画を立てる上での参考になり、研究の考え方のトレーニングにもなります。佐谷先生、永野先生には、研究内容に留まらず先生方の考えられる研究とは何かに至るまでの多くのご助言・ご指導を頂き、大変貴重な財産となっています。また様々なバックグラウンドを持つ先生方との関わりの中で、学ばせて頂くこと、視野が広がることも非常に多くあります。さらに、近い世代のもともとは違う所属や学部の方々と、意見交換をしながら、同じ空間で時間を共有する経験は何者にも変え難いものです。

この国内留学を通じ、知識や技術面だけでなく、思考や精神面でも多く勉強させて頂いています。がんを克服するためには多様な視点からの取り組みが必要です。がん研究・がん治療に少しでも貢献し、がん患者さんを減らすことを目標に、残りの留学期間、多くのことを感じ・考えられるよう過ごして参りたいと思っています。