第一内科について

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Stanfordより - 中野倫孝 -

中野倫孝

2019年よりスタンフォード 大学Calvin Kuo 研究室に留学しています。
腫瘍内科医として患者さんをみてきた経験をかてに、ヒトがん検体の組織培養を用いて、腫瘍免疫研究を行っています。ラボでの日常や、カルフォルニア での生活などお伝えしていければと思います。

2019年よりスタンフォード 大学Calvin Kuo 研究室に留学しています。
腫瘍内科医として患者さんをみてきた経験をかてに、ヒトがん検体の組織培養を用いて、腫瘍免疫研究を行っています。ラボでの日常や、カルフォルニア での生活などお伝えしていければと思います。

スタンフォード留学便り

2019年よりアメリカ西海岸カリフォルニア州にあるスタンフォード 大学 Calvin Kuo研究室にポストドクトラルフェローとして留学しています。私の大学院の頃の研究テーマであるヒト組織培養”オルガノイド”研究、特にこれからのがん治療においてより重要性をますと考えられる免疫細胞を用いたオルガノイドに取り組んでいる研究室です。2016年に参加した国際学会で彼の発表を聞いた時、面白いことをやっている人だなとすぐ思いました。というのも、私自身研究室でオルガノイドと免疫細胞の共培養を始めたところに、すでにまとまったデータを目のあたりにしたので、なんと言うか、独力で悪戦苦闘している場合ではないな、とその時感じました。世界にはあらゆる分野でそれぞれ秀でた研究室があり、自分の興味のある分野でそれらに競合するのは簡単でないことが多く、行ってみる、というのがもし可能であれば一つの選択かもしれません。私は2012年に大学院生として研究を開始しましたが、腫瘍内科医の考えるべき研究テーマが劇的に変化していったのを覚えています。特に、腫瘍免疫学の発展により多くのがん研究者がその新しい分野に参入していきました。私が大学院を終えて、腫瘍内科医として再び患者さんを診療する立場になった頃、数年前では考えられないような免疫関連の治療法がたくさん出てきていることに驚きながら、また同時にいまだ充分な効果のえられない現状も見つめながら、分野の進歩を実感したのを覚えています。自分のみてきた患者さんたちに還元できるような研究で、分野の方向性に沿った、自分の興味のある内容を考えていくと、いつか聞いたCalvinの講演を思い出したのです。九州大学の赤司先生・馬場先生に日本学術振興会のフェローシップを勧めていただくなどご指導いただき、勤務していた九州がんセンターの江﨑先生に支えていただきながら、ボスからオファーをもらって2019年秋にスタンフォード になんとか到着しました。

スタンフォード 大学 中庭にて

スタンフォード大学はアメリカでも有数の私立大学で、IT産業のメッカであるシリコンバレー に位置します。サンフランシスコ空港から電車に1時間揺られて最寄り駅に降り、椰子の並木通りである1直線のPalm Driveを20分程度歩くと、真っ青な空の下に美しい緑の芝が姿を見せ、荘厳なコロニアル風建築の重厚な回廊に囲まれたメモリアル・チャーチやタワーが現れ、広大なキャンパスが見えてきます。とても美しいキャンパスだと思います。病院地区だけでも、複数の研究施設が集まっていて様々なラボがありますが私のいる建物はLokey Stem Cell Research Building といって、幹細胞研究をテーマにした研究室が比較的多いです。その中で、Calvin Kuo 研究室はオルガノイドを用いたがん研究や幹細胞研究を中心に、スタンフォード内外の様々な機関と共同して研究をすすめています。ラボではデータカンファおよび全体ミーティングが定期的に行われ、お互い顔をあわせる機会が多いこともあり、何かと相談しやすい環境が整っています。入れ替わりはありますがリサーチアソシエイト3人、ポスドク10人、テクニシャン4人に学生数人といった感じで、中規模のラボになるかと思います。ラボにはアジアからヨーロッパからいろんな母国語を話す人たちが集まっていて、それでも会話が成り立ってお互い何となく言っていることは理解できて、物事がすすんでいくので、面白いですね。イベントも多く、ハッピーアワーといって建物内で毎週集まって話す場があり、ハロウィンのイベントがあったり、私ごとではありますがこちらで長女が生まれた時にベビーシャワーをしてもらったり、とても楽しい雰囲気です。

スタンフォード 大学 オーバルにて

レイクタホ ヘブンリー・ゴンドラからの眺望

ほぼ毎日晴天で、雲のない真っ青な空の下で過ごすこちらの生活はとても暮らしやすいです。冬の寒さもなく、夏は気温こそ高いですがカラッとしていて日陰に入ると涼しく気候は快適です。みな陽気で話しやすく、普通に散歩するだけで知らない人と挨拶を交わすことになります。スタンフォード 大学から徒歩5分の距離に住んでいますが、夜中はとても綺麗に北極星がみえて日本でいえば田舎に住む感覚です。大学から歩ける場所にゴルフコースがあり、コースでは鹿やグースの群れなどに遭遇することもできる自然に恵まれた立地で、しばしば家族そろってハイキングなどもしています。近くの海では、人が泳いでいるまさにその横の間合いにアシカが泳いでいます。車を出せばヨセミテ やレイク・タホなどの国立公園へのアクセスもよく、これから行きたい場所が山積みです。
このたび、留学という貴重な機会を与えていただき、学問を追求できるとても有りがたい環境の中で研究に専念し、カリフォルニアでの生活も楽しみつつ、この経験を実りあるものにしていきたいと思います。寄稿文を書いている現在、COVID-19の影響で世界中が大変な時期ではありますが、少しずつ明るい方向にすすむことを願います。そして最後に、若い皆さんも興味があればどんどん海外に挑戦してみるのも面白いかもしれませんね。

 

スタンフォード より

2020年 夏