易感染宿主における感染症の研究
当教室では、開講当時から感染症の研究に従事しています。ワイル病の病原体の発見に始まり、古くから、ワイル、インフルエンザ、デングといった研究室が存在し、それぞれの研究がおこなわれてきていました。最近では、易感染宿主に対する感染症を中心に研究をおこなっており、特にカンジダ、アスペルギルスといった真菌感染症に対して研究をおこなっています。
(1)カンジダ感染症
カンジダの起こす感染症は、主に血流感染症、中でもカテーテル感染症であり、カテーテルに形成されるバイオフィルムが難治化の要因となっています。カテーテル上に、一旦バイオフィルムが形成されると、各種抗真菌薬を投与しても無効なことが多く、予防することが重要です。現在は、バイオフィルムの形成に関与する因子や予防について研究中です。図1は、カンジダがバイオフィルム形成時の走査型電子顕微鏡の写真です。
(2)アスペルギルス感染症
アスペルギルス感染症は、血液疾患患者などに好発し、空調を中心とした環境因子が重要です。診断法として、血清ガラクトマンナン、各種画像診断といった診断法の確立、さらには、各種抗真菌薬の開発などに伴い、以前と比べると治療のオプションが増えてきています。しかしながら、一旦発症すると重症化することも否めません。研究としては、免疫不全マウスを用いて、肺アスペルギルス症の発症に関する研究をおこなっています。図2は、マウスの肺感染モデルの組織像です。
(3)腸内細菌叢の解析
ヒトの大腸には、多様な細菌が棲息して、腸内細菌叢を形成しています。嫌気性菌が主体であるが、その量は、1gあたり約10ˆ12個と言われています。そして、この菌叢の違いがヒトの健康、病気、老化などに関係すると考えられ、これまで嫌気培養などを行いながら検討されてきました。ただ70~80%の細菌が培養困難であることが問題で、分子生物学的手法を用いた解析が必要となってきています。その中で、Terminal RFLP法を用いた解析を利用して、移植に伴う菌叢の変化を研究しています。図3は、RFLPの原理と実際の解析例です。
(4)医療関連感染の分子疫学的解析
医療関連感染(院内感染)は、診療を行っていく上で避けて通れない問題です。検査部と協力して、耐性菌の疫学調査を行っており、その動向をみています。また院内感染対策上は、分子疫学的検査も重要と考えられ、必要に応じて検査を行うことで、伝播予防に役立てています。図4には、気管支鏡を介して伝播した事例のPFGE(パルスフィールド電気泳動)の1例を示します。
図1:カンジダバイオフィルム
(走査型電子顕微鏡による観察)
図2:アスペルギルスのマウス肺感染モデルの組織像
図3:腸内細菌叢の解析

図4:緑膿菌のアウトブレイク時のパルスフィールド電気泳動(PFGE)を用いた解析

(参考文献)
Shimono N, et al. An outbreak of Pseudomonas aeruginosa infections following thoracic surgeries occurring via the contamination of bronchoscopes and an automatic endoscope reprocessor. J Infect Chemother. 2008; 14: 418-23.

