九州大学医学部 第一内科

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研究紹介

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心血管分野(循環器)

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循環器研究室の研究

研究テーマ

(1)赤血球変形能測定による微小循環生理の解析

(2)不整脈の起源に関する組織解析

(3)食塩感受性高血圧における内因性ウアバインの関与について

(4)薬剤性心筋障害の機序と病態の検討

(5)心筋収縮蛋白の解析、心臓の発生や再生に関する研究

(1)「血液サラサラ・ドロドロ」という言葉を最近よく耳にします。赤血球の変形能は微小循環を規定する最大要因で、これが低下すると全身性の微小循環障害が生じます(図)。糖尿病・脂質異常症・高血圧では赤血球変形能が低下することをヒトや実験動物で定量的に、再現性を持って明らかにしました。 この領域は循環器研究と血液研究の接点といえます。

赤血球は微小血管内を折れ曲がり変形しながら通過します。その変形能はヘマトクリットが増加する程大きな影響を持ちます。

(参考文献)
Ariyoshi K, Maruyama T, Odashiro K, et al. Impaired erythrocyte filterability of spontaneously hypertensive rats. Circ J 74: 129-36, 2010
Ejima J, et al: Relationship of high-density lipoprotein cholesterol and red blood cell filterability. Clin Hemorheol Microcirc 22: 1-7, 2000
Saito K, Kogawa Y, Fukata M, et al: Impaired deformability of diabetic rat and human erythrocytes. J Biorheol (in press)

(2)血管・心臓接合部付近の心筋細胞は、周囲の結合織からの影響、薄い心筋壁の機械的負荷や、特異な線維配列やイオンチャネルの分布から不整脈の温床となります(図)。この点を電気生理学的検討や心エコーによる検討で明らかにしました。特に左室流出路起源の心室頻拍はHurstのテキストにも引用されています。

(参考文献)
Arita M, Saeki K, et al: Studies on transmembrane action potentials and mechanical responses of the venae cavae and atria of the rabbit. Jpn J Physiol 16: 462-480, 1966
Shimoike E, Ohnishi Y, et al: Radiofrequency catheter ablation of left ventricular outflow tract tachycardia from the coronary cusp. J Cardiovasc Electrophysiol 10: 1005-9, 1999
Maruyama T, Kishikawa T, et al: Augmentation of pulmonary vein backflow velocity during left atrial contraction. Cardiology 109: 33-40, 2008

(3)日本人は食塩を多く取る民族で、これが高血圧の多さに関係していると言われています。食塩を過剰摂取するとウアバイン様の体液性因子が中枢神経で産生され、これが血管収縮を起こすことを中枢神経の破壊実験と血管標本の収縮実験で示しました。

(参考文献)
Katafuchi T, Oomura Y, Akaike N, Maruyama T: Hypothalamus and Na-K pump activity in skeletal muscles of DOCA-hypertensive rats. Am J Physiol 253: R396-401, 1987
Karashima E, Nishimura J, et al: Involvement of Na-Ca exchanger in cAMP-mediated relaxation in mice aorta. Br J Pharmacol 150: 434-44, 2007

(4)血液疾患や固形腫瘍では心毒性のある薬物をしばしば使いますが、その実態や予防策は明らかではありません。当研究室ではこれらの毒性機序を基礎的・臨床的に検討してきました。

(参考文献)
Mori T, Yanagi N, et al: Left ventricular diastolic dysfunction induced by cyclophosphamide in blood stem cell transplantation. Jpn Heart J 43: 249-61, 2002
Odashiro K, Hiramatsu S, et al: Arrhythmogenic and inotropic effects of interferon investigated in perfused and in vivo rat hearts. Circ J 66: 1161-7, 2002

(5)遺伝子、蛋白、細胞レベルで心臓の働きを理解し、新たな治療への発展に寄与するため、心筋の発生に関与する遺伝子や、心筋収縮蛋白の制御機能解析、近年注目を集めている心筋再生に関する研究も行っています。

心筋アクチン形成に重要な働きをしているたんぱくの解析(新規formin相同たんぱく質であるFhos2/FHOD3 は、心臓、脳、腎臓に特異的に発現しており、アクチン形成能を有するだけでなく中間径フィラメント nestin とも関わっている。金谷ら、Genes Cells 10: 665-78, 2005)

(参考文献)
Kanaya H, Takeya R, Takeuchi K, et al: Fhos2, a novel formin-related actin-organizing protein, probably associates with the nestin intermediate filament. Genes Cells 10: 665-78, 2005
Shirai M, Osugi Koga H, et al: The polycomb-group gene Rae28 sustains Nkx2.5/Csx expression and is essential for cardiac morphogenesis. J Clin Invest 110: 177-84, 2002
Koga H, Kaji Y, et al: Overexpression of polycomb-group gene rae28 in cardiomyocytes does not complement abnormal cardiac morphogenesis in mice lacking rae28 but causes dilated cardiomyopathy. Lab Invest 82: 375-85, 2002
Ishikawa F, Shimazu H, Shultz LD, et al: Purified human hematopoietic stem cells contribute to the generation of cardiomyocytes through cell fusion. FASEB J 20: 950-2, 2006

循環器研究室の歴史

ワイル氏病発見でノーベル賞候補にあがった稲田龍吉第一内科初代教授は心臓の生理学的研究にも強い関心を持ち、大正2年石原誠教授(生理学教室)と共著で第19回九州沖縄医学会誌に日本初の心電図に関する論文を発表しました。その後、前野哲夫(T11)は石原教授の指導のもとプルキンエ線維からの活動電位を初めて記録し、木村登(S11)は昭和14年にベクトル心電図法を開発しました。

▲田原先生は世界で初めて心臓の中の刺激伝導系という概念を提唱しました(マンガ「ペースメーカーの父田原淳」(梓書院)の表紙より轉載)。

その後、森博愛(S23)らによるベクトル心電図の研究、中村元臣(S25)らによる生化学的研究、真柴裕人(S31)らによる微小電極法による不整脈の研究などが行われました。昭和33年には心臓血管研究施設が創設(山岡教授が初代教授を兼務、後に中村元臣教授が専任)されました。

真柴、伊東、有田らは、1960年代~1975年前半にかけて血管・心臓結合部の電気生理学的研究を行い、この部分に異常自動能が発生することを世界に先駆けて報告し、これが心房細動の発生に関与する可能性を指摘しました。この仮説はカテーテルアブレーションが普及した現在、臨床的にも証明され最近の不整脈学のトピックのひとつになっています。

伊東、藤野、金谷らは、1970年代後半~1980年代前半にミクロの電気生理学に加え、ホルター心電図などを用いたマクロの不整脈、自律神経活動と不整脈の研究、心臓超音波検査法に関する研究を積み重ね、WPW症候群における副伝導路の局在を、電気生理学的解析ではなく心臓超音波検査による力学的解析で判定できることを報告しました。世界ではじめてこの疾患のelectro-mechanical relationに言及した業績でした。

▲カテーテルアブレーションの様子

榎本、津田、丸山らは、1980年代後半~1990年代前半に、ミクロの電気生理学的研究を発展させ、パッチクランプ法を用いたイオンチャンネルの電流解析、ランゲンドルフ潅流心を用いた心力学や心筋代謝、心筋の三次元的興奮伝搬の解析などが行われました。また心臓超音波検査を用いた膠原病の心病変の研究は、Dubois のSLEのテキストにも引用されています。

1990年前半より臨床分野で心血管インターベンションの技術が向上しました。この流れと田原淳(たはらすなお)先生(図)以来の不整脈研究の流れが合流したものがカテーテルアブレーションです(図)。研究室は1992年から本法を導入し500例を超える症例を積み重ねてきました。この中から、心室頻拍の中に左室流出路起源のものが存在し大動脈弁上からの高周波通電で根治出来ることを示した論文は、旧くは真柴主任時代に見出された血管・心臓接合部の不整脈源性を実証したものと言えます。

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