大学病院での肝臓疾患治療として私たちは次の3つを基本としています。
- (1)肝炎、肝硬変、肝癌の、エビデンスに基づいた最新の治療を適切に行う。
- (2)移植が必要な症例の、移植前後での治療を行う。
- (3)各診療グループと連携して、大きな肝障害を未然に防ぐ。
(1)B型肝炎の治療については、最適なインターフエロン使用や核酸アナログ使用の時期を考えるとともに、核酸アナログ治療後のインターフェロンといったタンデム療法も行います。
C型肝炎の治療においては、九州大学関連肝疾患治療研究会(KULDS)の参加施設として、積極的にペグインターフエロン+リバビリン併用療法を行っています。多くの症例の集積があるため、I型高ウイルス症例に対しての治療は若いうちにするほど、治癒になりやすいという臨床的エビデンスを示すことが出来ています。また、プロテアーゼ阻害剤の使用も積極的に行います。
原発性胆汁性肝硬変については診療グループ代表者が厚生労働省診療ガイドを分担執筆していることもあり、特に症例が集積されています。肝生検施行後、最新の病期・活動度分類に従い評価を行います。自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎などの比較的まれな肝疾患においても、診療グループ代表者が、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」の研究協力者であり、診断治療に習熟しています。
肝臓疾患に特有の痒みの症状についても、積極的に治験を行っています。肝癌の治療として超音波ガイド下の経皮的治療を行いますので、超音波検査といった手技に習熟できます。
(2)生体ドナー不在であるため、脳死肝移植を希望する非代償性肝硬変症例が増えつつあります。肝硬変の増悪を最小に抑え、肝癌の出現有無を確認し、また門脈圧亢進症などの合併症を防ぎつつ移植の時期を待つ必要があります。コントロールの困難な大量の腹水コントロールや肝腎症候群・感染症などに細心の注意をはらいつつ全身管理を行います。移植後もde novo 自己免疫性肝炎など極めてまれな合併症などもきちんとrule outできるだけの診療能力を高めます。また、関連施設からの急性肝炎重症型、劇症肝炎を積極的に受け入れ、移植も視野に入れつつも内科的救命に努めます。多くの症例を経験した結果、図1に示すようなアルゴリズムに沿って、内科的救命を積極的に進めるべき症例と移植を考えるべき症例とに分けることができるようになっています。
(3)現在免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策が重要視されています。過去の当診療グループでのde novo HBV感染に対する治療経験の集積から、総ビリルビン値が2.0mg/dLを超えると救命率が極めて不良となることを見出していますので、HBVウイルス量の定期的な測定と、早期の核酸アナログ使用による肝炎発症の予防を行います。薬剤性肝障害の治療、特に薬剤投与後の遷延する胆汁鬱滞などの加療も積極的に行っています。


